英国理学奨励会ご招待「グラスゴー大学創立450年祝賀式典」東京帝国大学代表 
「グラスゴー大学名誉学位授与式」                   

<第一次渡航> 明治34年(1901)6月27日付ロンドンから
本月十日グラスゴーに至り十二日より十五日迄 同大学四百五十年祝賀式・宴会などに出席し当博覧会を少しく見物し 十七日同所を出立 エジンボロ・ダンヂー等の大学を巡視し再び当地に帰り申し候 <中略>                                               
 さて又今回の祝賀式に就きて私の最も面目となりたる事は学位授与の一件にこれ有り候 グラスゴー大学の名誉学位は非常に貴きもので欧米の有名なる学者少数を選抜して之を授与しこの学位(法学博士の学位にて全く名誉的のものなり 外国にては姓名の後にLL,D.の略字を記してその行為を明かす)を有する者の栄誉甚だ高き事に成り居りしが今回の祝賀式に際し各国の有名なる学者(祝賀式に参列せるとせざるとに係わらず)百二十名程を選びてこの学位を授与せり  私も幸いにその選に当りて今回この学位を受け申し候 今回東洋人にしてこの学位を受けたるもの一人もこれ無し事ゆえ授与式の前は四、五千人の観覧者より非常なる拍手を招き 思い掛けなき面目を博し実に愉快に存じ候 御許様にも共に御悦び下されたく候 授与式に出席せる服装は授与式の節入用にこれ有り候て一組新調致し候(急の間に合はざりしゆえ 出来合いのものを求めたり もっとも通常の洋服と異なり誰にてもよく合うものなり)其の内之を着け写真を撮り申すべき候と存じに付きお送り申すべき候  ガウン姿                        
 グラスゴー滞在中は旧工部大学校の教頭たりしダイヤー教授の客となり何不自由なく丁重に待遇され其の他どこにても歓迎を受け悦び申し候                              

ロンドン大学留学中の恩師ウイリアムソン博士に再会する ウイリアムソン博士と我学界
 グラスゴーへ出立前ウイリアムソン先生を訪問致し候処 老夫婦の喜び実に限りなく 涙を流しからだを引寄せ あたかも二十年振りにて自分の子に出会いたるの思いを以って悦ばれ 英国人の情の厚きこと益々承知しながら今回は一層その感情を強くいたし候

 又ロンドンへ帰着後は旧友を伺い 一昨日は旧友四、五名を晩餐に招き候処 何れも非常に喜び兄弟同士も及ばぬ位の情を示し時の過ぐるを知らず 一時半過ぎ殆ど二時頃までも旧を話して喜び合い申し候 <以下略>